夢の坂(再編集版)
1998年にacuteより発売された「起動困難だがシナリオは秀逸」とされた怪作にして良作を容易に起動できるようにリメイク(acute様よりリメイクの許諾を得ています)
85.5点
登場人物の大半に深い心の傷があり、心に傷を持つ彼らが古い伝説を持つ「夢の坂」の「怪異」に巻き込まれながらも、自分のあるべき場所、進むべき道、帰るべき場所を見出そうとする物語。
シナリオは良質とされながらも起動が難しくプレイが困難であった、「夢の坂」をシステムを一新して容易にプレイできるようにリメイク。今日の伝奇ノベルとは一味違う独特のシナリオ展開は一度プレイしてみる価値あり。主人公もヒロインも精神年令は訳ありの名門校の生徒ということで高めだが、等身大の少年少女として描かれ、かつ皆魅力的に描かれている。
深刻なトラウマ、ふさがらない心の傷。それを持った男女が弱みを見せぬよう心を壁で閉ざしながらも、救いを求める物語。
傷の舐め合いでなく、真の救済を与えてくれる運命の人はいるのか?
心を開けば傷を負い、心の傷口を見せれば心の痛みはさらに増す。しかし、心を開かねば自分の傷は癒されず、救いを受けることはできない・・・想いを寄せた相手はトラウマから心に壁を作り、告白をすれば拒絶される・・・しかし拒絶した相手も心の奥底で救いを与えてくれる人を求めていた・・・。
そして彼らを巻き込む古い妖魔の伝説を持つ「夢の坂」・・・。
シリアスで重い展開あり、ギャグあり、緊迫した展開有り、涙ありの伝奇ノベルゲーム。伝奇小説としても菊池秀行氏に代表される「伝奇アクション」より、半村良氏に代表される「伝奇ロマン」に近い部分があります。シナリオの作風を広げたい方にも参考になる作品のはず。
本作は、元々の制作ブランドである「acute」の許諾を得てリメイクと配布を行っています。
プレイ環境の問題なのかクリックしていないのに時々ページが勝手に送られる、発言者の名前表示がないので複数人の台詞が続く場面だと誰が喋っているのかわかりにくい、人物の立ち絵の切り抜きが少々雑、バックログ機能がない等々、不満に感じた点は色々とあります。しかし、それらを吹き飛ばすほど人物の心理描写が巧みで会話が抜群に面白い(さすがに時代を感じる部分もありましたが)。
18禁要素がほとんどないプロローグが一体いつまで続くんだ…と最初は思っていたのに、気づけば意味深長な台詞の一つひとつをじっくり噛み締めるように読んでいました。埋もれたままにしておくには惜しいと制作者様が感じたのも大いに頷ける作品です。
そして、これほど文章量の多いゲームを再編集し、無料で遊べる形にしてくださった制作者様には感謝の念を禁じ得ません。
話がいろいろとむずかっしかったが、面白かった。
途中、展開が早く混乱したが個別ルートでの伏線回収を終わらせると納得できた。
ゲームに収録されている説明書にあるとおり、深みのある伝記ものストーリはさすがの商業作品クオリティ。キャラグラのクオリティも文句なく、90年代当時の活力を今に伝えてくれます。現在プレイしても何の古臭さも感じられません。これは快適なプレイ環境を構築した配布者様の努力の賜物でしょう。
これほど素晴らしい作品が幻のゲーム扱いされていた事実に驚愕します。まさにあの当時、エロゲーに活気があった時代だからこその現象でしょう。制作メーカーも全く聞いたことのない名前ですが、確かな実力が窺えます。
また、この作品をアーカイブした配布者様と、それを許可した版元様にも感謝を禁じえません。今の時代にこんな作品に巡り合えるのは奇跡と言っても言い過ぎではないでしょう。いつかこの流れが主流になることを贅沢にも願ってしまいます。あの時代の作品の数々が事実上、もうプレイできないというのは損失でしかありません。
それにしても配布者様は一体何者なのか、妙に気になってしまいます。もしかして関係者? とも勘繰ってしまいますが、ここで言うことでもないのでしょう。
エロゲーとしてヌケるかどうかは個人的な判断になるのでよく分かりませんが、普通のゲームとしても充分楽しめる内容なのでプレイして損はありません。また、ちょっと大人な絵柄も最近の絵柄に適応できない自分のような人間にはとても魅力的です。これからエロゲーを作ってみたい人は、この作品を教材にするのもいいかもしれませんね。
設定も手が込んでいたけれど、登場人物たちの織り成す悲しくも切ない物語に感動した。
最終シナリオで、それ以前のルート別エンディングで幸せに終わっているようでいて、実は泣いている人達が居た、ということを気が付かせる終わらせ方は独特だと思った。
色々問題はあるけど、川崎さんのルートが一番皆が幸せな終わり方なのかな。
一番感動したのは吹雪のシナリオだったけど。
最終シナリオの広瀬は可哀そうで見てられなかった。あの後ちゃんと立ち直れたのかな・・・。
既に書かれてるかもしれないが、1998年に作られたとは思えない「作り込まれた設定」に驚き、そして登場人物の「心情描写」が胸を打つ。切なさ、悲しさ、愛しさ、人の心の怖さ、美しさがどれも深く描かれている。スタンプで押した記号化された陳腐なキャラの描き方などなく、ちゃんと一人の人間として描かれている。伝奇として面白いけれど、異色の青春モノとしても素晴らしい。昔のゲームゆえの古臭さはあるけれども、ぜひともプレイして欲しい作品。
特に吹雪氷雨の心が救われるシーンはとても感動的だった。こういうヒロインの心が救われるシーンをちゃんと書けるシナリオライターはあんまりいないんじゃないかな。ボリュームもい結構あり、中~長編を楽しみたい人にはぜひ勧めたい。
真・リメイク版はなんとしても出して欲しいところ。
作り込まれた設定と人物描写が素晴らしい作品。日常会話に古さを感じさせるものがあるが、逆にキャラクターの内面描写、心情の描写は今の作品にあまりない深みがあり、心に訴えるものがある。
あまりここまで書けるライターはいないのではないか?と思う。
この「再編集版」を足掛かりに「真リメイク版」まで作ってもらえたらなあ。
オーソドックスな学園モノと思ったら、実はかなり異色の伝奇ノベル。
伝奇好きはやって損をしない作品。
設定や、「魔物」側の攻撃手段はかなり特殊で、1998年に作られた作品とは思えない。
埋もれていた良作、というのがピッタリな作品。日常パートに古さを感じさせるものがあったけど慣れれば問題ないかな?ただ、主人公がトラウマを克服できたのか?については疑問が残る。攻略対象の7人の女性キャラに過去の主人公のトラウマである「自分が性的虐待の被害者」だったことを明かしたのは一人しかいない。心の痛みを共有できる人を探して、前向きに生きること、を作品は訴えていると思ったけど、やっぱり主人公は十分にできていなかったようにも見える。ただ、主人公は不利な状況下でよく頑張ってはいたし、逃げずにヒーローしてました。立派です。しかし、髑髏と人骨の魔法陣を使って陰で酷いことしてた連中が制裁を食らわずに済んだのは、納得がいかないかな。まあ、そこは不満が残るけど面白い作品でした。
作られた時期を考えると、かなり深く掘り下げられた伝奇モノ。登場人物の発した何気無いセリフに実は深い意味があったりする。古臭ささもあるけど、逆に今のゲームや小説にはないものがある。
特に最後の戦いで、ヒロインから「受け取ったもの」によって、敵との戦いに勝利する(というか
調伏するというべきか)といった感じになっているのはおもしろい。
あるヒロインから「愛」をもらって、「愛」によって、相手を成仏させて打ち克つ(勝つよりこっちの方がただしい気がする)、あるヒロインから「智慧」をもらって「敵」に力を与えていた存在を説得して、「力の供給」をやめさせて、「敵」を無力化して勝利、とか。
結構怖いのや、痛々しいシーンもあるので注意してみるべき。ギャグは多いけどそれを隠すオブラート
かも。